「柔道ガッツポーズ問題」をわかりやすく解説します

5月 5, 2020

柔道は日本でうまれ、世界に普及したスポーツ。近年の柔道の世界大会では、試合で勝った選手がガッツポーズをして勝利の嬉しさを表現している姿が目立ちます。

柔道の試合で勝ったら、ガッツポーズをしていいの?
柔道ではガッツポーズが許されているの?

この記事では、こういった疑問をわかりやすく解説していきます。

なぜ、柔道でガッツポーズが問題になっているのか柔道家として、観客として理解できるようになりましょう。

この記事を書いた人
はるにーた

柔道歴13年、柔道三段。
中学生の時に柔道を始め、高校、大学でも柔道部として活動。
卒業後は青年海外協力隊柔道隊員として、南米のボリビアに派遣。2年間ボリビアのサンタクルス県で柔道の指導にたずさわりました。
柔道のことやボリビアのこと、その他もろもろについてブログを書いています。

そもそも何が問題なの?

柔道は日本で生まれ、世界中に広がったスポーツです。

近年の柔道の世界大会では、試合で勝った選手がガッツポーズをする姿をよく見かけます。

しかしながら、柔道はスポーツである前に武道でもあります。

武道の世界には、武道の精神やあり方というものが存在します。

一つの例として「礼に始まり、礼に終わる」という言葉の意味をみてみましょう。

礼に始まり礼に終わる

剣道をはじめとする武道の精神・あり方について、試合においては作法を守り、また相手への敬意を示すことが、何よりも重んじられるべきである、ということを述べる表現。 礼儀・礼節をもって試合に臨むことは勝敗よりも重要であるという考え方を伴う。


実用日本語表現辞典

柔道は武道なので、このような武道の精神を尊重するべきだという意見が多いのです。

柔道は本来武道なんだから、武道の精神にのっとった振る舞いをするべき。
ガッツポーズをすることは、相手に対して失礼なのでしてはいけない。

なんで柔道ではガッツポーズが反則にならないの?

試合に勝った時にするガッツポーズが、伝統的な武道の精神にふさわしくないということが問題になっているのです。

柔道では、ガッツポーズが許されているのか?

柔道のルール上では、ガッツポーズについての禁止されている文言はありません

なので、事実上ガッツポーズをすることが許されている、という解釈ができます。

しかしながら、礼法に関して国際柔道連盟試合審判規定の第9条「試合の開始」にはこのような記述があります。

試合が終了し、主審が勝者を示したら、試合者は同時に右足から一歩下がり互いに礼をする。
試合者が礼をしなかった場合、もしくは正しくない礼法を行った場合(腰から30度の角度で礼をしなかった全試合者が対象)、主審は試合者に正しい礼をするように指示をする。正しい礼法を実行することは非常に重要である。

2018年~2020年 国際柔道連盟試合審判規定

ガッツポーズに関してははっきりと記載が無いものの、礼法に関しては「正しい礼法を実行することは非常に重要である」としっかりとルールブックに記載されているのです。

この礼法に関する記述は、柔道の武道の精神が汲み取られたルールだと言えます。

「柔道ガッツポーズ問題」を理解する

ポイントを整理しながら、ガッツポーズ問題を見ていきましょう。

ポイント① 文化の違い

2019年1月現在、世界中の201もの国と地域が国際柔道連盟(IJF)に加盟しています。

これだけ世界中に柔道が広がれば、柔道も各国々の文化や習慣に馴染んでいくことが想像できます。

日本はもともと挨拶をするときには、頭を下げておじぎをするのが一般的です。柔道でも同じです。

しかし、他の国では握手をしたり、顔にキスをしたり、さまざまな挨拶の仕方が存在します。

また、各国によって表現のしかたも同じように違いがあります。大げさにリアクションをとる国もあれば、そうではない国もあります。

そういった文化が違う国にも、うれしいことに柔道が広がったことで元来の柔道とは違う形に変化していることは事実です。

柔道が世界中に普及していく中で、柔道も各国の文化と混ざり合っています。これだけ世界に普及していることからも、文化の違いを考慮して、ガッツポーズに代表される勝利の表現は許されていると考えられます。

ポイント② 柔道の精神面が正しく伝わっていない

前にも書いた通り、柔道は世界中でたのしまれているスポーツです。

柔道が世界中に普及されている中で、柔道の本質である柔道の精神面が正しく伝わっていない、ということがあります。

日本の武道の精神は日本人であるから理解できるものの、海外の人から見たら日本独自の文化なのです。

私たち日本人が海外の文化を理解することが難しいように、海外の人たちにも日本の文化を正しく理解することは時間のかかることです。

なので、柔道の競技性の部分が先行していて柔道の精神性やあり方について理解が遅れている、という現状なのです。

ただ、海外の人たちにとって柔道はゲーム性に魅力があるスポーツです。だからこそ、世界中に普及することができたのです。

ポイント③ 柔道とお金の関係

スポーツとお金の話は少し闇ですが、触れていきます。

もし、柔道で強くなったあかつきに国際大会で優勝をしたとします。優勝すれば賞金がもらえ、国もその選手や柔道競技を応援するようになっていくでしょう。

スポーツを通して国の知名度が上がっていくとなれば、お金をかける意味もあります。

「スポーツとお金」という側面から見れば、柔道の精神面に力を入れる必要などありません。ただ強い選手を育てて勝ってもらえばいいのですから。

柔道界の模範、大野翔平選手

73キロ級日本代表の大野翔平選手は、世界大会で何度も優勝するスター選手です。

2016年のリオデジャネイロオリンピックでは金メダルを獲得、出場する数々の大会で金メダルを獲得する選手です。

その大野選手はリオオリンピックの決勝戦で勝った後も、ガッツポーズをしたり喜んだりもしませんでした。

大野選手は後のインタビューでこう語っています。

「対人競技なので、相手を敬(うやま)おうと思っていました。(五輪は)日本の心を見せられる場でもあるので、よく(高ぶる)気持ちを抑えられたと思います」

金メダル・大野将平が貫き通した強くて美しい「日本柔道」の誇り

柔道の精神面を大切にしていることが、彼の言葉からくみ取ることができます。

「日本柔道は、やはり重量級がピックアップされる。悔しい部分もありました。中量級の僕でもインパクトのある、ダイナミックな柔道、本当に強くて美しい柔道をできるんだということを証明したかったし、柔道界のシンボルみたいな選手になれるようにこれからも精進していきたい」

金メダル・大野将平が貫き通した強くて美しい「日本柔道」の誇り

大野選手は柔道の強さだけでなく、柔道界を引っ張っていくような内面の強さも兼ね備えた選手です。

彼の姿から海外の選手も多くのことを学んでいくことでしょう。

まとめ

武道とガッツポーズ、切っても切れない問題です。

しかしながら、一方的に「それはダメなことだ」と切り離すのではなく、何が問題でどのように問題を理解していくのかという姿勢が私たちには必要です。

これが、世界中に広まり、多くの人たちに愛されている柔道なのです。

2020年オリンピックイヤーで柔道競技においても金メダル獲得が期待されています。

日本が生んだ柔道が世界に人々に愛されていることを誇りに思い、オリンピックの柔道を楽しみにしましょう。

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